高度プロフェッショナル制度に関する質問主意書と答弁書

高度プロフェッショナル制度に関する質問主意書(2018年4月20日提出)と答弁書(2018年4月27日受領)を掲載します。(事務所投稿)

平成三十年四月二十日提出
質問第二四二号
高度プロフェッショナル制度に関する質問主意書

提出者  尾辻かな子
高度プロフェッショナル制度に関する質問主意書

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(平成三十年四月六日提出)第一条(労働基準法の一部改正)により新設される労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号。以下「労基法」という。)第四十一条の二に関して、以下の通り質問する。なお、本条の創設により新設される新たな制度を、「高度プロフェッショナル制度」と呼ぶ。

一 対象業務について
1 新設される労基法第四十一条の二第一項第一号において、「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務」とあるが、具体的には、どのような業務が定められるのか。
2 新法の施行に伴い前項の厚生労働省令を定める場合や、将来的に変更する場合には、その都度、労働政策審議会に諮問を行うのか否か。
二 対象労働者の「同意」について
1 新設される労基法第四十一条の二第一項第二号「イ」において、「使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること」とあるが、「その他の厚生労働省令で定める方法」とは具体的にどのような方法か。
2 前項の合意について、対象労働者は事後に、任意に撤回しうるのか。
3 労基法第四十一条の二第一項第八号においては、「使用者は、この項の規定による同意をしなかった対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと」とあるが、仮に、同意をしなかった(または、同意を撤回した)対象労働者が、解雇その他不利益な取扱いを受けたとして、労働基準監督署その他行政官庁に申告を行った場合、行政官庁はどのような措置を取ることになるのか。
4 前項の対象労働者が、解雇その他不利益な取扱いを受けた場合、当該不利益取扱いは実体法上無効となるのか。例えば、同意をしなかった対象労働者が、そのことを理由に解雇された場合、当該解雇は無効になるか。賃金減額や配置転換についてはどうか。
5 同意をしなかった対象労働者が、解雇その他不利益な取扱いを受けたとして司法上の救済を求める場合(たとえば、解雇された対象労働者が、解雇は無効であるとして労働契約上の権利を有する地位の確認を求める場合)、司法手続においては、労働者側が「同意を拒否したことを理由とした解雇である」と主張し、使用者側が「別の理由(例えば成績不良)による解雇である」と主張する事態が想定される。このような場合、解雇の有効性について、当該労働者と使用者のいずれが民事訴訟上の立証責任を負うことになるのか。
三 対象労働者の「所定労働時間」について
1 現行法上、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない等と定められており(労働基準法第十五条)、「労働条件」の具体的な内容としては労働基準法施行規則第五条で定められているが、かかる規則は高度プロフェッショナル制度が適用される対象労働者についても及ぶのか。
2 使用者が、高度プロフェッショナル制度の対象労働者の「所定始業時刻、所定終業時刻及び休憩時間」または「所定労働時間」を定めた場合において、対象労働者の遅刻、早退または欠勤等により、実労働時間が所定労働時間に満たなかった場合、使用者は、就業規則等に基づいて不就労時間に応じた賃金の減額(いわゆる欠勤控除)を行うことが許されるか。
3 使用者は、高度プロフェッショナル制度の対象労働者の所定始業時刻、所定終業時刻及び休憩時間または所定労働時間について定めるにつき、労基法上、何らかの制約を受けるか。たとえば、使用者が「始業時刻 午前九時、終業時刻 午前二時、休憩時間 なし」と定めた場合や、「一日の所定労働時間は十七時間とする」「一か月の所定労働時間は二百八十時間」と定めた場合、労基法違反となるか。
四 労使委員会決議の有効期間について
1 新設される労基法第四十一条の二第一項柱書においては、高度プロフェッショナル制度の適用に関して、使用者が、委員会(以下「労使委員会」という。)の決議を行政官庁に届け出ることとされているが、かかる決議の届出が行われなかった場合には、対象労働者についても、「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定」が適用されるのか。
2 労使委員会の決議の有効期間については法律上制限があるのか。すなわち、一定期間ごとに決議を行って、届出を行うことが必要なのか否か。
五 労働基準監督署による指導等について
1 新設される労基法第四十一条の二第二項では、労使委員会決議の届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、第一項第四号から第六号の措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならないとされているが、かかる報告(以下単に「報告」という。)は、どの程度の頻度で行わせるのか。例えば一年おきに報告させるのか、三年おきに報告させるのか。
2 報告を受けた行政官庁(労働基準監督署)は、(1)当該報告の真実性について疑問を持った場合、(2)使用者が第一項第四号から第六号までに規定する措置をとっていないと判断した場合、具体的にどのような措置をとることができるか。
3 使用者の報告の内容は、改正後の労基法第百六条においても、「周知」の対象とされていないが、これはなぜか。また、対象労働者は、使用者が行政官庁に対していかなる「報告」を行ったのか、知ることができるのか。できるとすればどのように知ることができるのか。
右質問する。